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ニコ動の神殺し - インセンティブ論の崩壊 -
 すいません、また主張です。今回はかなり青臭いです。
 本当に何回も言いますが、無理して読まなくて結構です。

 ただ、動画の制作者になってしまったら言えないこともあると思うので、今のうちに書いておきます。
 なぜ著作権を侵害してはいけないのか?
 この問いかけに対して、ほとんどの学習者・専門家が挙げるのが、インセンティブ論です。

 インセンティブ論というのは要するに、著作物を作るには、一定の労力とお金がかかる。だから著作者に対して、費やした資本(お金)を回収するための権利を与えることで、創作に対する意欲を失わないようにしよう、ということです。
 裏から見れば、お金を儲けるための権利をあげることで、創作に対するやる気を起こさせよう、ということでもあります。

 ほとんどの人が、この意見には納得すると思います。
 私もこの主張の正しさを、全く疑ってはいませんでした。
 ――ニコ動が登場するまでは。
 
 ニコ動の登場によって、このインセンティブ論は半分崩壊した、というのが私の意見です。
 なぜ「半分」だけかというと、20世紀的な著作物については、従来のインセンティブ論が有効だからです。
 順に見ていきましょう。

<出版・テレビ放送・ゲームの製造販売など、従来の著作物>
 これらは、作品の発表に多大な投資が必要です。
 同人活動をしたことがある人なら分かると思いますが、95%以上の同人サークルは、大赤字です。理由は、本の印刷費が、ものすごく高いからです。利益を出すなんて、到底不可能です。
 一般的な出版なども、かなり金銭的な負担に苦しみながらやっているはずです。実際、出版というのは一種のギャンブルなんだそうです。ほとんどの本はあまり売れないので赤字。「ヒット作」が出てやっと黒字になり、それで赤字の分を埋め合わせた残りが、出版社の利益というわけです。
 ですから、彼らが著作権の権利強化に腐心するのも当然で、違法コピーなどがまかり通っていたら、とても商売などやっていられないでしょう。
 個人的には、これら旧来の、著作権法が想定してきた著作物については、今まで通りの運用の仕方で、特に問題もないのではないかと思っています。

<いわゆる「二次創作」>
 正直、自分はニコ動がここまで伸びるとは思っていませんでした。脳にこびりついたインセンティブ論が、「金をもらわないアマチュアの作品なんて、限界があるに決まってる」と囁いていたからです。
 が、現実はご覧の通りです。数百万の金をもらっている芸能人が出て、プロが必死に作っているテレビ番組など、くだらなくて見られなくなってしまいました。
 ニコ動のうp主たちは、なぜこれほどまでに面白い動画を、無報酬で作るのでしょうか?
 理由は二つほど考えられます。
 
 1.精神的インセンティブ論
  実は作者がほしがっていたのは「精神的」報酬であって、お金は二の次。だから賞賛のコメントなどをもらい、精神的な報酬が得られれば、それだけで人は動画を作るのだ、という考え方です。
  よく語られる話ですが、自分はこれだけではないと思っています。
  次を見てください。

 2.そもそも金銭的な投資が必要ない
  ネット上の二次創作のほとんどは、「素材」を用いて行われます。
  たとえばRPGのプログラムなんかをやってみると分かるんですが、ゲームを作る時にかかる労力のほとんどは、「素材」を作ることに費やされています。
  なので他人の「素材」を借りて作られる二次創作では、その「素材」を自分で用意する必要がないため、金銭的な投資を大きく(ほとんどゼロに)抑えることが出来ます。
  だから、ネット上の二次創作者たちは、金銭的な見返りを求めなくても、そもそも原作の開発費や出版費用に比べれば、出費がほとんどないということです。

 1.も美しい話なんですが、このエントリで特に注目したいのは2.です。
 これをどう見るかで、二次創作の評価は大きく変わってくると思います。

 たとえば著作権を管理したり、プロとして創作を行っている人からは、次のような反論が考えられます。

無断で素材を借りることは著作権侵害である。
 ↓
本来やってはいけないことである。
 ↓
MADの作者たちも、自分で創作するなり、他者から許諾を得るなりして、
正当な方法で素材を用意すべきだ。
 ↓
しかし、それはとてもお金がかかることである。
 ↓
そうなれば、MAD制作者も、視聴者にお金を払うことを要求するだろう。
 ↓
MAD制作者が「報酬を得ずに作品を作る」というのは嘘である。
彼らは著作権侵害という違法行為を行っているから、それができるだけだ。


 どうでしょう。なかなか強力な反論だと思います。

 ただ、自分としてはこの考えに不服があります。
 無断で素材を借りることが、著作権侵害であるということ、その根拠に、不服があるのです。

 そもそも、著作権法の権利の根拠はなんでしょう? インセンティブ論だったはずです。
 たとえば自分がせっかく作った作品を、他人が勝手に売って勝手に金を儲けたりしたら、作品を作る気力は消え失せてしまうでしょう。そういう不正をなくし、創作者のモチベーションを維持するために、作られた法律だったはずです。
 では、ニコ動における「素材」としての利用を禁じる根拠はなんでしょうか。

 そもそも、非営利かつ無報酬の利用に対しては、著作権は及びません。
 そういう公民館における小学生の演劇のようなものにまで著作権を及ぼし、金を巻き上げるのは、ちょっとやり過ぎだろうという判断からです。

 一方で、インターネットへのアップロードは、著作権者のこうむる経済的損害が大きいため、営利・非営利を問わず侵害行為とされています。
 では、そのインターネットへのアップロードで、著作権者のこうむる経済的損害が、ごく微量だとしたらどうなるのでしょうか?
 たとえインターネットへのアップロードでも、著作権者の経済的権利を損なわないものがあるとすれば、それは著作権の効果を及ぼし、金を巻き上げるべきではないのではないでしょうか。

 繰り返しますが、著作権法がなぜ無断利用を制限しているかというと、著作権者の経済的損害を防止するためです。
 金儲けのための複製はもちろん、「みんなでこのソフト使おうぜ」という「ただ乗り行為」も防止するために、たとえ非営利目的であっても、インターネットへのアップロードは侵害行為とされているわけです。
 しかし、「作品の一部をインターネットへアップロードし、かつ著作権者の経済的利益を損害しない」利用行為があるとしたらどうでしょうか?
 私は、一部のMADムービーが、それに該当するのではないかと思うのです。

 もちろん、「MADムービーは著作権者の経済的利益を損害する」という客観的な証拠が挙がれば、この説は取り下げようと思っています。少なくとも、音楽に関しては一曲まるまる使われることが多いため、明確な損害が起こっていると自分は考えています。
 ただ、権利者たちは「使いたいなら許諾を受けろ」と言う一方で、金を払えば使わせてくれるわけでもないようです。
 要するにMADに関する限り、現在の公衆送信権(著作財産権)が保護しているのは、「俺の作品を勝手に使うのは許せない」「むしろ誰にも使わせたくない」という作者あるいは企業の「こだわり」なのです。しかしそのような「こだわり」を保護するのなら、その権利は著作者人格権に属するべきです。自由に譲渡可能な著作財産権が、このような「こだわり」を保護し、そのことによって一般的な消費者(視聴者)である自分が不利益を強いられるのは、私は不当であると感じています。

 このように、20世紀的な著作物(本やゲーム)の間ではインセンティブ論が上手く働いている一方で、ニコ動の二次創作に対しては、インセンティブ論は崩壊しています。
 正確には、インセンティブ論を厳密に適用すると、現在のMADに対する法的な扱いはおかしいのですが、法がその自己矛盾を抱えたまま放置されていたり、一部の人間がそのような法を金科玉条のように扱い、「著作権侵害」をわめきたてていることが問題なのです。

 ニコ動はインセンティブ論という著作権法の神に、瀕死の重傷を与えました。
 しかし、法はインセンティブ論に基づいて、公衆送信権を制限する方向へ向かうでしょうか?
 私にはむしろ、インセンティブ論の崩壊を放置したまま、「権利強化」の方向、すなわち破滅へとひた走る法の姿が、脳裏をかすめてしまうのですが・・・。

 ***

 このエントリは以上です。
 この議論にはまだまだ穴があるのですが、自分の思考整理の一貫としてUPしました。
 それでも読んでくださった方がいらっしゃったのなら、心より感謝申し上げます。
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反対側の立場からも考えてみると面白い
こんばんは初めてカキコ致します。

大変興味深いご主張でした。いずれどこかで議論したい気がします。
(わたしは貴兄におおむね同意の立場です)

著作の権利については反対側の立場から見てみるのも興味深いと思います。
創作者と創作を依頼(命令)した者についてです。

音楽や文学作品の製作者は何かの片手間で簡単な創作をすることから
始まったと思います。民謡や民話の作者はこのような立場でしょう。
費用も時間も特別には要しない代わりに代価もないも同然でした。

これを芸術作品とも呼べる域に引き上げるには
王侯貴族のような余暇や財力が必要だったでしょう。

ただ、余暇や財力があっても才能がなければ自分で作ることができない。
そこで貴族たちは才能のあるものに出資して作品を自分のために作らせたのです。

のちにそれらの作品は公開され、あるいは貴族以外の出資を受け製作されるように
変遷しました。

そして時代は下り、貴族による創作への出資(パトロン)はなくなり、
製作会社やファンドによる投資によって作品の製作資金が賄われるようになりました。

見方によってはだれしも芸術作品のパトロンとなることができるようになったわけです。
ところが、技術の進歩によりそれにただ乗りすることもできるようになりました。
(違法アップロードなどです)
貴族が独占した時代から比べてはるかに軽い負担であるにもかかわらず
なぜ一部の人々はパトロンとして出資することを拒むのでしょうか。
(卑近な例ですが年収1億円以上と称している知り合いの医者ですら
DVDをレンタルしてコピーしているのです。なげかわしい)

わたし自身はそういう事柄に対して高潔な精神をもって望みたいと思っています。
れぽうp | URL | 2009/07/11/Sat 20:18 [編集]
 れぽうpさん、こんにちは! コメントありがとうございます。

 このエントリでは「下からの」視点に終始していますが、実は「上からの」視点は、このブログでは意識的に避けてきました。理由は簡単で、私の能力が、それを語るレベルにないからです。

 思うに、創作者側からの視点こそ、視聴者側からの視点よりも語るのが難しい問題だと思います。
 たとえば創作者の生活一つとっても、ベートーベンのように赤貧の中から最強の音楽を作った人もいますし、ルーベンスのように何の不自由もなく暮らした人もいます。
 では創作者は貧乏でもいいのか(どうせ金払わなくてもいい作品作れるんだろ)というのは、明らかに論外…のように思えますが、ニコニコ動画というのが登場してしまいました。そこでは大量の無名の職人たちが、1円ももらわずに、仕事の合間を縫って、素晴らしい動画を作っています。
 彼らの作品は、一見これまでの、大量に資本を投下して作られた作品に劣るようでいて…自分には、少なくとも「面白さ」では、対等以上に思えます。民法のテレビ番組など、一千万円単位のお金が掛かっているはずですが、くだらなくてもう見られなくなってしまいました。
 私はまだその事実に混乱している状態です。いつかは踏み込まなければいけない領域だと知りつつも、未だに――はっきり言って、分かりません。

 しかし、創作者の利益というものを語る上で、一つの鍵となるのが、この「インセンティブ論」、すなわち「著作権とは、投下した資本を回収するための権利である」という大前提です。今回はこのことについて考えるために、部分的に切り取ってエントリを書きました。というか、切り取らざるをえませんでした。
 また、このエントリは、書いていて「何か重要なものが足りない」気がしていました。創作者の視点とも違う、何か重要なものがつかめていない感覚です。それは今も残っており、自分の限界を感じた部分でもあります。
 正直、複眼的に著作権者と利用者の両方から著作権を語れるようになるのは、当分先かなあと思っています。それに実際にはほとんどの場合、創作者=著作権者ではないのですから…。

 今自分に語れるのは以上です。
 その場で上手く切り返すのは苦手なので、正直「議論」は勘弁してほしいのですが(このコメント書くのに一時間近くかかりました)、また気付いたことなどありましたら、コメントしてくださいw
 では。
gase2 | URL | 2009/07/11/Sat 22:40 [編集]
議論という言葉にビビらないようにw
議論と言ってもディベート=討論をしたいわけではありませんw
著作権や製作という行為について”いろいろ”お話したいだけですよ。
文字で書くもどかしさを取り払ってやり取りをしてみたいということです。
れぽうp | URL | 2009/07/12/Sun 19:28 [編集]
 あ、どうも! お返事ありがとうございます。

>文字で書くもどかしさを取り払ってやり取りをしてみたい
 ああーそれはもう超同意です!
 やっぱり文字だと限界がありますよね。
 口で言えばなんでもないことなのに、文字で書くと妙に角が立ったり。あるいは文字だからこそ、口では言えないようなことまで書いてしまったり。日本語って難しいなと思います。
 英語圏のアニメ評論とか見てると、批判してても日本語ほど嫌味がないんです。なんだか客観的に見えるというか。自分には、外国語で書いてあるから・・・だけとは思えませんね。あんまりこの言葉は使いたくないんですけど、文化の違いかな、とも思います。
gase2 | URL | 2009/07/12/Sun 19:58 [編集]
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